ヤシガラ椀の外へ (ベネディクト・アンダーソン) ★★★★ [読書]
「想像の共同体」で有名なベネディクト・アンダーソンが、自らの学問的な経験やキャリアをわざわざ日本人向けに書いたものです。アメリカやイギリスの学者はそういうものは書かないのが普通ということですが、編集者や教え子の熱意に理解を示して書いてくれたそうです。なかなか興味深い内容ですよ。
インドネシアやシャム(著者は”タイ族”だけの国ではないという考えに共鳴している)には『ヤシガラ椀の下のカエル』という諺がある。これらの国では、半分に割ったヤシガラをお椀として使う。この椀には台がなく、底は丸いまま。椀が上を向いているところに間違って飛び込み、椀が引っ繰り返って中に閉じ込められたカエルは、椀を前後左右に動かすことはできても、なかなかそこからは抜け出すことができない。そうこうしているうちに、やがてカエルの知る世界はヤシガラ椀が覆う狭い空間だけになってしまう。
ただ、『井の中の蛙』とはちょっとニュアンスが違うようですね。まぁ、この諺が本文でも強調されているけれど、日本の若い読者へのメッセージをこめて、本のタイトルは「外へ」となったそうです。
「想像の共同体」の執筆経緯にも触れられている。イギリスにおけるナショナリズムの論争に加わることが目的で書かれたために、イギリス語(ここも著者のこだわり)を第一言語としている人でないとわかりにくいらしい。
まぁ、そこは実感としてわからないです。実は、「想像の共同体」は途中までしか読んでいないのです。またいつかチャレンジしてみないと。
最後の索引がまた凄い。事項索引よりも人名索引が圧倒的に多い。人と人のつながりを大切にしていることがここからも伺えます。
市立図書館で借りました。
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