いっしん虎徹 (山本 兼一) ★★★ [読書]
江戸時代の刀鍛冶、長曽祢興里の物語。「火天の城」では安土城を作った宮大工の話でしたが、今回は刀鍛冶。この人は、昔の職人の話が上手い!
越前の甲冑鍛冶として有名であった興里は、優れた刀をつくる志を持って江戸に出る。多くの苦難の後、名刀を作るのだが、とにかく”鉄”に対する姿勢がものすごい。だからこそ”職人”なのだろうけど、これでもかこれでもかと”鉄”に打ち込む。それを支える病身の妻、ゆき。そして、親の仇と思っていた興里に弟子入りする正吉。江戸での師匠となる兼重。御用鍛冶である、叔父の才市。興里の刀を評価してくれる、大僧都の圭海、試刀家の加右衛門。幕閣の争いに巻き込まれたり、偽医者にだまされたりもしながらではあるが、興里はひたすら刀鍛冶としての道を究める。刀というのは、そこまでしてつくるものなのかと感嘆させられる。死生の哲理をきわめる道具だと興里はいう。そして、”人の生き死にをつかさどる道具であるからこそ、刀で一番大切なのは品格である”と。
市立図書館で借りました。
共通テーマ:本
コメント 0