川あかり (葉室 麟) ★★★★ [読書]
葉室さんの小説には外れがない。
綾瀬家に仕える伊東七十郎はまだ十八歳、しかも臆病者で有名である。だが、元勘定奉行の増田惣右衛門
から、対立する江戸家老の甘利典膳を斬ることを命じられる。隣国の上野藩まで来たが、降り続く雨のため、巨勢川が川止めになって渡れない。たまたま知り合った豪右衛門の誘われて、汐井宿の木賃宿で雨がやむのを待つことにする。そこには、坊主の徳元、猿回しの弥之助、遊び人の千吉、鳥追いのお若という奇妙な面々がいた。七十郎はしばらくその木賃宿で過ごすことにするのだが・・・。
設定が絶妙。川止されている数日間の話であるが、綾瀬藩の内紛、対岸の祟厳寺村の悲劇などが絡みながら進む話は面白くて緊張感もある。
「日が落ちてあたりが暗くなっても、川面だけが白く輝いているのを見ると、元気になれる。なんにもいいことがなくっても、ひとの心には光が残っていると思えるから」。川明かりを見たくなった。
市立図書館で借りました。
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